・前回のあらすじ~1984年、ブレッド&バターは新興のファンハウスに移籍します。シングル「ばらけたイニシャル」、アルバム『セカンド・セレナーデ』をリリースした彼らに飛び込んできたのはスティービー・ワンダーが「I JUST CALLED TO SAY I LOVE YOU~心の愛」をリリースし、映画「WOMAN IN RED」の主題歌となり大ヒットしたというニュースでした。
実はその曲、元々岩澤幸矢さんがスティービーのスタジオを訪れた時期に、幸矢さんのために書き下ろされた曲なのでした。
スティービーはその後、ツアー・ギタリストから著作権の問題で訴えられ、窮地を救ったのが幸矢さんが所有したデモ・テープだったのです。
この件がきっかけでスティービーとの交流が復活し、新曲「remember my love」を書き下ろしてもらうことになりました。
その後は映画「タッチ」の主題歌「さよならの贈り物」をリリースしたり、ピーター・ゴールウェイのプロデュースでアルバム『ミッシング・リンク』やセルフカヴァー・アルバム『マリエ』などをリリースし、フィフス・アベニュー・バンド周辺との交流が深まりました。
しかし、1990年代半ばにはファンハウスの体制が変わってしまい、レコード会社の壁を越えたベスト・アルバム『ALIVE』をリリースし、また移籍することになってしまったのです。
・1998年にはかつて所属していたアルファ・レコードに復帰し、カーネーションとのコラボレーションが実現します。
これはブレッド&バターのスタッフがカーネーションのファンにも存在を知ってもらいたいという目論見があったようです。
当時のカーネーションはアーティスト契約はコロムビアと結んでいたものの、メンバーが個々のプレイヤーとして、高野寛さん、ともさかりえさんに大沢誉志幸さんなどのレコーディングやライヴに参加していた時期でもありました。
ブレッド&バターの代表曲「ピンク・シャドウ」をゲストに田村玄一さん、当時エスカレーターズのZOOCOさんを迎えて録音し、シングルとしてリリースされました。カップリングは直枝政太郎(当時のアーティスト名、現在は本名の政広で活動中)さんのヴォーカルをフィーチャーした(作曲は岩澤兄弟に直枝さん、当時カーネーションの棚谷祐一さんの共作)「DOLPHIN」でした。
このシングルはアナログ盤として、GREAT TRACKSからリリースされる予定があります。
ちなみにCDシングルには「ピンク・シャドウ」のバッキング・トラックも収録されていますが、今回のアナログ再発からは漏れてしまいました。
ちなみにこのアルバム、Wikipediaではリミックス・アルバムとされてますが、新曲2曲(「DOLPHIN」と「ENDLESS STREAM」)以外はかつて発表された曲(「ピンク・シャドウ」「REMEMBER MY LOVE」「DEVIL WOMAN」「いつから」「地下鉄」「魔術~このアルバムでの表記はMAGIC」)の再録という内容です。この辺の選曲は直枝さんによるものでした。
ちなみに近年、ソニーオーダーメイドファクトリーで『BB・C+1』という形でリクエストを募りましたが、未到達という結果に終わりリリースされませんでした(ちなみに+1は「ピンク・シャドウ」のカラオケ)。
そして、このアルバムの発表後の12月にはクラブ・クアトロでブレッド&バターのバッキングをカーネーションが担当した発売記念ライヴが行われています。
1998年10月には残念ながらアルファ・レコードは音楽制作から撤退したこともあって、企画CDへの参加が続きました。
1999年7月にブレッド&バターにテリー伊藤さんを加えたThe YOO-HOO名義でポニーキャニオンから短冊形CDシングル「ナイフ」をリリースしています。
2000年にはYAHHOH名義(ブレッド&バターにテリー伊藤さん、下町兄弟と鳥山雄司さんが加わったユニットです)でシングル「朝からテキーラ」をリリースします。この曲はTOKYO MX TV「TOKYO BOY」のエンディング・テーマやニッポン放送「テリーとうえちゃん」の挿入歌として使用されました。ちなみにレーベルはbb maniaです。
2001年ブレッド&バター・ファミリー名義で格闘家アンディ・フグに捧げる「ANDY~青い瞳のサムライ」をリリースしています。レーベルはファインラインミュージックです。
同年にはパナホームCMソングとして使われた、加藤和彦さんのカヴァー「家をつくるなら」がノベルティCDとしてリリースされました。こちらの名義はブレッド&バター WITH フレンズです。
この時期のCDを入手することは困難ですが、大手動画共有サイトで検索するとなんとか聴くことはできる模様です。
企画もののシングルのリリースが続いた後の2001年6月にはワーナーミュージックジャパンから久々のオリジナル・アルバム『HOT CLOUD 9』がリリースされました。
楽曲を提供したのは(当時)キリンジの堀込泰行さん、ヒックスヴィルの木暮晋也さん、かせきさぃだぁさん、南佳孝さん、テリー伊藤さんと多岐に渡る顔ぶれでした。
演奏はドラムスにそうる透さん、ギターに原田暄太さん、ベースにクリス・シルバースタイン、キーボードに勝又隆一さんがメインで、楽曲ごとに木暮晋也さん、鳥山雄司さんにNOXX(鈴木茂さん、小原礼さん、元サンデイ&サンセッツの井ノ浦英雄さんに二弓さん)さんが担当する形です。
木暮晋也さんが殆どの楽器を担当した「夏のヘッドフォン」や堀込泰行さんが作曲した「レイン of ラブ」(キリンジのアルバム『OMNIBUS』で歌詞を変えてセルフカヴァーしています)などの彼らの定番になりそうな曲が複数収録されていましたが、アルバム自体の売り上げはブレッド&バターにとって普段通りという感じに終わりました。
その後、「大人による、大人のための音楽」をスローガンにしたビクターのaosis recordsに移籍し、2004年3月には移籍初のアルバム『SUMMER KNOWS』をリリースしました。
原点回帰の意味が強く代表曲の「ピンク・シャドウ」、「MONDAY MORNING」に「SHONAN GIRL」の再録音やP.P.&M.の「LEAVING ON JETPLANE」やビートルズの「IN MY LIFE」などのカヴァーが収録されています。
そして、この時期に複数のレコード会社が混迷していた象徴に思えるレーベルゲート2という形でリリースされたことを付け加えておきます(CDからのデジタルコピーを妨げようとしたビクターのみの規格、他社ではコピーコントロールCD)。これがとんでもない愚策だったということは歴史が証明しています。
2005年4月には移籍第2弾のアルバム『SKY』がリリースされ、幸矢さんによると「今回は二人一緒にブースに入って歌入れしたりと、初期の頃のレコーディング・スタイルにあえて戻してみることで、生の部分というか、人間味を大切にしたので、より僕ららしい作品に仕上がっていると思います」と当時のインタビューで触れていました。
aosis recordsにいた時期だったので、レーベル創設に関わった新川博さんのスタジオを使ったり、新川さんがプロデュース面でも関わっていたのでした。
同年10月にはセルフカヴァーを中心にしたアルバム『SHONAN BOYS』をリリースしています。スティービー・ワンダーの名曲「HAPPIER THAN MORNING SUN」を冒頭に、代表曲を再録しています。基本的には二人でギター一本で収録したものにプロデュースした新川博さんたちが演奏を被せる所謂「サウンド・オブ・サイエンス」式で完成させました。
そして、ボーナス・トラックとしてエヴァリー・ブラザーズで有名な「DEVOTED TO YOU」や彼らの代表曲「風」に「ピンク・シャドウ」のライヴ・ヴァージョンが収録されています。
アルファ・レコードの販売権がソニー・ミュージック・ダイレクトに移行したことをきっかけに、ブレッド&バターはソニーから2006年に『ブレッド&バター LIVE 2006』をDVDでリリースします。参加メンバーは鈴木茂さん、林立夫、新川博さんに萩原“メッケン”基文さんとスペシャル・ゲストに岸部四郎さんを迎え、収録曲は彼らの代表曲を取り上げた初のライヴ映像作品でした。
2007年6月には代々木公園での「エコライフ2007」に出演。この時はギターに松原正樹さんとキーボードに新川博さんをサポートに迎え、代表曲中心の短い時間ですが、充実したライヴでした。
8月には松任谷由実さん、かまやつひろしさん、加藤和彦さん、杉真理さん、森山良子さん、小椋佳さんたちが楽曲提供をした『海岸へおいでよ」をリリースしています。
アルバムのコンセプトは「『あの頃のまま」』から30年近く経って、彼らは今どうしているの?」というものでした。
提案したのはソニーのハウス・プロデューサーの吉田“KAKU”格さん。このアルバムではプロデューサーとディレクターを兼任しています。
編曲は新川博さんと(杉真理さんのサポートを長年続けている)京田誠一さんでした。
このアルバムとカフェ・ブレッド&バターゆかりの人々で『茅ヶ崎・湘南東海岸・カフェブレッド&バターの軌跡』という招待制のライヴを開催し、WOWOWで放送された後にDVD化されています(2000年にWOWOWで放送されたライヴも同梱した二枚組仕様)。
演奏は鳥山雄司さん、新川博さん、美久月千晴さん、河村智庸さんなどのメンバーに、ゲストで松任谷由実さん、かまやつひろしさん、加藤和彦さん、南佳孝さん、鈴木茂さん。松任谷正隆さん、ジェイク・シマブクロさんが参加しました。
この時期、彼らの初期の代表曲をコンパイルした『Silver Bread & Golden Butter』もリリースされていますが、当初はTDKレコード時代の作品も収録される予定がありましたが販売権移行のためNGとなってしまったのでした。
ソニーからはボックス・セットの発売も予定されていたらしく、その辺の諸々で実現しなかったのは本当に残念です。
ここまで走り続けたブレッド&バターは少しの間活動を休止します。
2011年6月にはエイベックス・イオに移籍し、アルバム『OH!LIFE』をリリースしたり、それに合わせてカフェ・ブレッド&バターを一週間限定でオープンしています。
そして、ワニブックスから『伝説の[カフェ・ブレッド&バター]』を出版。ブレッド&バターの歴史が詳細に記されていて、『ALIVE』での「ピンク・シャドウ」のクレジットの間違いがこの機会に訂正されました。
『OH! LIFE』に話を戻すと、プロデューサーは鳥山雄司さん、歌詞は松井五郎さんという組み合わせで、また新しい一歩を踏み出したのです。
ちなみにボーナス・トラックとして「REMEMBER MY LOVE」の日本語ヴァージョン(オリジナル・シングルのカップリングに収録されたもの)が収録されました。
2014年7月にはソニーから4枚組のベスト・アルバム『幸矢と二弓~Essential B&B」がリリースされました。レコード会社横断のベスト盤は『ALIVE』以来で入手困難になっていた楽曲やヴァージョンが収録され、充実した内容です。
そして、ワニ・プラスから45周年記念ということで「幸矢と二弓」をリリースしています。
充実したヒストリカル・インタビュー(インタビュアーは富澤一誠さんと田中雄二さん)と貴重な写真に関連ミュージシャンのインタビューやコメントという内容で、ブレッド&バターを詳しく知りたい方におすすめの一冊(正確には二冊が同梱されている形)です。
2015年12月4日にはさくらホールでライヴを行い、その20日程度後にはそのライヴをCD-R化した『BREAD & BUTTER LIVE BEST 2015』をamazon recordsからリリース。
共同プロデュース&キーボードは新川博さん、ベースは田中章弘さん、ギター市川祥治さんにドラムは濱田尚哉さんという顔ぶれが参加しました。
14曲入りで彼らの代表曲が網羅されていますが、現在は入手困難になりつつある模様です。
これ以降のブレッド&バターは活動を不定期に行っていましたが、2019年以降はデビュー50周年のライヴを演奏にSKYE(鈴木茂さん、小原礼さん、林立夫さんに松任谷正隆さん)を迎え開催し、コロナ禍の現在も継続しています。
2021年にはSKYEと共に行ったライヴ『ブレッド&バター50周年スペシャルコンサート~あの頃のまま』がDVD化されたり、ビクター(aosisレーベル)時代の作品がマスターピース・コレクションとして再発されました。
・追記~この時期のことは調べても不明なことが多かったり、私も追いかけていない時期もありますので、不本意な内容になってしまいました。
それで皆さまからの情報お待ちしております。確認次第修正しますので、どうかひとつお願い致します。
とりあえずThe History of Bread&Butter は一区切りですが、レア・トラックや編集盤の紹介をやる予定があります。もう少しお待ちください。
・参考資料
「THE DIG No.41」(シンコーミュージック・エンターテイメント)~ブレッド&バターインタビュー(インタビュアー木村ユタカ)
「坂崎幸之助のJ-POP School 3」(自由国民社)
「伝説の[カフェ・ブレッド&バター]/岩澤幸矢・岩澤二弓」(ワニブックス)
「レコード・コレクターズ2021年3月号/アルファ・レコード特集」(ミュージック・マガジン)
「幸矢と二弓」(ワニ・プラス)
・最新更新~2021年12月27日
All written by Hiroshi Sugar Sugai
Twitter @sugasugarheaven
Instagram @gost2sinn
皆さまからのご意見、ご感想お待ちしております。
コメント