・前回のあらすじ~ブレッド&バターはコロムビアでライヴ盤を含めて4枚のアルバムをリリースした後、グループでの活動を休止し、ソロ・アルバムの準備期間に入ります。
兄の幸矢さんはソロ・アルバムの準備でロサンゼルスを訪れ、スティービー・ワンダーに再会し、曲提供にこぎつけています。
弟の二弓さんはソロ活動の準備と平行して、カフェ・ブレッド&バターの開店~経営に参加しています。カフェでライヴをするうちにブレッド&バターでの活動を再開するきっかけをつかみました。
1979年にはアルファ・レコードと契約して、3枚のアルバムと2枚のベスト盤をリリースしました。当時のプロデューサー有賀“TONY”恒夫さんのサジェスチョンにより、「湘南」というコンセプトと洗練されたサウンドで注目される存在となっていました。
1982年に新設されたばかりのTDKレコードに移籍し、ロサンゼルス録音のアルバム『NIGHT ANGEL』とライヴのメンバーが録音に参加したアルバム『FINE LINE』にベスト盤『SURF CITY』をリリースして、またレーベルを移籍することになります。
・1984年9月には東芝EMIの第二制作部が独立し設立したファンハウスに移籍しました。
シングル「ばらけたイニシャル」とアルバム『セカンド・セレナーデ』をリリースしています。担当ディレクターはかつてオフコースをブレイクに導いた武藤敏史さんです。武藤さんはコーラス・アレンジも担当して、より洗練されたサウンドになった印象があります。
「ばらけたイニシャル」の作曲者はかつて武藤さんが担当していた安部恭弘さんです。安部さんは後にアルバム『PASSAGE』でこの曲をセルフ・カヴァーしていますね。
この年、スティービー・ワンダーが本来幸矢さんに書いた「I JUST CALLED TO SAY I LOVE YOU~心の愛」が映画「WOMAN IN RED」の主題歌になり、全世界的大ヒットとなりました。
この曲が大ヒットした結果、スティービーは当時のツアー・ギタリストから作曲したのは自分だと訴えられてしまいました。
そこで、スティービーはスティーブン・スティルスと幸矢さんの3人で録音したデモ・テープのことを思い出したのです。
幸矢さんはスティービーのために録音したデモ・テープを裁判所に提出し、スティービーの著作権が認められたという次第でした。
これをきっかけにかつて録音されたブレッド&バターの「I JUST CALLED TO SAY I LOVE YOU~特別な気持ちで」の封印が解かれたのです。同年12月21日にシングルとしてリリース、ジャケットの半分はこの曲が発表されるまでのいきさつが書かれていました。
聴いた感じではベーシック・トラックはそのままのようですが、スネアの音などが差し替えられて、コーラスをオーバー・ダビングしたように思います(ちなみにこのヴァージョンのコーラス・アレンジはギタリストの松下誠さん)。
1985年9月にはシングル「夢がとぶ」をリリース。この曲の作詞は安井かずみさん、作曲は加藤和彦さんで編曲は武部聡志さんという顔ぶれでした。加藤さんとブレバタがロンドンで『IMAGES』を録音した際サディスティック・ミカ・バンドを準備中の加藤さんに再会したエピソードが思い出されます。
この曲のロング・ヴァージョンがレーザー・ディスク『アペリティフ』に収録されていました(当然、現在入手困難)。
1986年4月にスティービー・ワンダーが作詞・作曲・編曲に演奏を担当した「remember my love」(カップリングは同曲の日本語ヴァージョン)がリリースされ、フジテレビ「夜のヒットスタジオ」ではブレッド&バターとスティービーの共演が実現しました。
同年6月には同曲収録のミニ・アルバム『remember my love』をリリースしていて、そこには「I JUST CALLED TO SAY I LOVE YOU~特別な気持ちで」の再録ヴァージョンも収録されています(編曲は伊藤心太郎さん~恋するフォーチュンクッキーの作曲者で、コーラス・アレンジはハイ・ファイ・セットの山本俊彦さん)。
アナログとCDの狭間でリリースされたため、収録曲の
「第2土曜とキッチンのバラ(SHE'S GONE)」と「DEDICATED」は未だに未CD化です。
更に11月には劇場用アニメ「タッチ」の主題歌「さよならの贈り物」をリリースしています。
この曲のソング・ライティング・チームは初期チェッカーズに曲提供をしていた作詞売野雅勇さん、作曲(編曲も)芹澤廣明さんでした。もしかしたら、この曲がブレッド&バターの作品として世間に一番知られている楽曲かもしれませんね。
1987年5月には松任谷正隆さんプロデュースのアルバム『或る夜の出来事』をリリースしました。歌詞面のスーパーバイザーとして田口俊さんが協力して、プログラマーで浦田恵司さんが参加していることが特筆すべきことでしょう。
有線などで話題になった「センチメンタル・フレンド」がシングルとして発表されています。「Nonstop to Brazil」(作曲はMAYUMI~堀川まゆみさん)や「ラヴィ・サンバ~人生は過ぎる~」、「O CARNAVAL」などブラジリアン・ポップとの接近も興味深いところです。
同年11月にファンハウス移籍後初のベスト・アルバム『MIRACLE TOUCH』がリリースされています。アナログ盤も出ていた時代なので、10曲収録です。「夢がとぶ」や「さよならの贈り物」は初アルバム(初CD)化されました。
ちなみに「特別な気持ちで」はミニ・アルバム・ヴァージョンが収録されていて、ミニ・アルバムからは「NIGHT SHIFT」と「DO・DA・DAY」が入っています。
1989年7月にはフィフス・アベニュー・バンドのピーター・ゴールウェイのプロデュースでシングル「ワイオミング・ガール」とアルバム『MISSING LINK』をリリースしました。
ちなみに「ワイオミング・ガール」はブレバタ初の短冊形CDシングルで、作詞・作曲は井上陽水さんでした。
アルバムの編曲は再結成フィフス・アベニュー・バンドのマレイ・ウェインストックが担当しています。
アマチュア時代に幸矢さんとアメリカを旅した麻田浩さん(日本のフォーク・シンガーのはしりで、当時ピチカート・ファイヴやザ・コレクターズが所属していた麻田事務所のオーナーでもありました)が共同プロデュースしていることを付け加えておきますね。
同年11月にはベスト・リメイク・アルバム「マリエ」をリリースしています。
レコード会社の移籍が多かった彼らの代表曲を再録音するというコンセプトで、プロデュースは前作に引き続いてピーター・ゴールウェイ。編曲もマレイ・ウェインストックが担当しています。
殆どがフィフス・アベニュー・バンド関連のメンバーが演奏していますが、コロムビア時代のシングル曲「SAILING ON BOARD」の演奏はNRBQ(!)が担当しているのが特筆すべきことでしょう。
1991年6月にはシングル「君がいた夏」とアルバム『水の記憶』を同時リリースしました。
アルバムの編曲は引き続きマレイ・ウェインストックと徳武弘文さんや田原音彦さんが担当したものが混在しています。シングルのカップリング(Breadのカヴァー)「IF」でした。
結局、このアルバムがブレッド&バターのファンハウスでの最後のオリジナル・アルバムとなってしまいました。
1992年にはVO5枝毛シャンプーCM曲の「奇蹟のヴィーナス」と、同曲収録のベスト・アルバム『ブレッド&バターベスト'92/奇蹟のヴィーナスをリリースしています。
『MIRACLE TOUCH』と重複しているのは「ばらけたイニシャル」のみで、未発表曲「アンフィニ[Infini]」が収録されていますから、熱心なファンには嬉しいアルバムでした。
1993年からはブレッド&バターのリリースはシングル中心になり、8020イメージ・ソングの「ETERNAL FRIEND」にテレビ東京系「ニュースTHIS EVENING」エンディング・テーマ「僕の知らない夏」(カップリングは安田成美さんをゲスト・ヴォーカルに迎えた「CHILDREN OF THE SEA」)と横浜FM「ハマラジ湘南王国847」キャンペーン・ソング「London-Paris-New York-湘南」を発表しています。
1995年11月にはアルバム未収録のシングルを中心にコンパイルしたファンハウス時代のベスト・アルバム『SUPER BEST 2000』をリリースしました。
1996年8月には待望のオリジナル音源、オリジナル・テイクで編集した初のヒストリカル・レア・ベスト・アルバム『ALIVE』をリリースしています。このアルバムではフィリップス時代のシングルA面3曲、「傷だらけの軽井沢」「マリエ」「愛すべきボクたち」、レ・ミストラル名義の「青い地平線-BLUE HORIZON」、「あの頃のまま」のシングル・ヴァージョンが初CD化され、橋本淳さん作詞・筒美京平さん作曲(編曲は門倉聡さん)の新曲「TROUBLE LADY」と「トゥルー・ラブ」が収録された決定版の内容です(ただ「野生の馬」と「ピンク・シャドウ」の編曲は明らかにミス・クレジットですが)。
ブレッド&バターは結果としてファンハウスの体制の変化に巻き込まれることになり移籍を決断します。ただ、彼らがファンハウスにいた期間は一番長く、作品をリリースした数も圧倒的に多かったことだけは強調しておきます。
・追記~再びアルファ・レコードに戻って、カーネーションとアルバム『BB・C』をリリースするまではなんとかと考えてましたが、スティービー・ワンダーとのエピソードなど書かなければならないことが多すぎました。
次回はアルファ~ワーナー~ビクター~ソニー~エイベックスと行くことができるかどうか?
編集盤についても書きたいので、vol.5か6までですね。すみません、もう少し続けます。
・参考資料
「伝説の[カフェ・ブレッド&バター]/岩澤幸矢・岩澤二弓」(ワニブックス)
『ALIVE』ライナー・ノート/河合美佳(ファンハウス)
「THE DIG No.41」(シンコーミュージック・エンターテイメント)~ブレッド&バターインタビュー(インタビュアー木村ユタカ)
「幸矢と二弓」(ワニ・プラス)
All written by Hiroshi Sugar Sugai
Twitter @sugasugarheaven
Instagram @gost2sinn
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