黎明な説明~今年に入ってGO→ST通信アンソロジーを3回続けて書いたところ、あまり反応がないというか、評判がよろしくないと思ったので、ここで力が入ったものをアップしないとここの過疎化に拍車がかかってしまうと判断しました。
で、昨年斉藤哲夫さんのイベントにジャック達が出演する予定がありまして、結局はコロナ禍で中止してしまったのですが、その時に備えて準備したものを書いてみたいと思います。
実は斉藤哲夫さんは私が音楽を好きになる過程で何度も現れているアーティストなので、かなり駆け足で書くにしろ、それなりの長さが必要になってしまいます。
ちなみに基本的な部分はvol.2(2013年11月25日配布)が初出です。
それではもうしばらくお付き合いください。
・これからGO→STに関わりのあるアーティストを不定期ですが、取り上げていきたいと考えております。
第一回目は先日、ジャック達の主催イベント「ロマンティック研究所vol.4」(2013年9月21日)に出演された斉藤哲夫さんです。哲夫さんが日本のフォーク&ロック、そしてポップスに与えた影響は小さくないということをこの機会におもいっきり駆け足ですが書いてみたいと思っています。
斉藤哲夫さんは1970年2月5日(51年前の今日!)にシングル「悩み多き者よ」でレコード・デビューしています。
この曲のピアノは後にはちみつぱい、アーリータイムスストリングスバンドの渡辺勝さんが弾いています。これが勝さんの初レコーディングだったそうです。
その1年後の2月5日(つまり50年前)にはセカンド・シングル「されど私の人生は」を発表していますが、この曲で私は斉藤哲夫さんの存在を知りました。
それはよしだたくろうさん(当時の表記)のライヴ・アルバム『よしだたくろう・オン・ステージ!!ともだち』にカヴァー・ヴァージョンが収録されていたからです。このアルバム、実は私が日本のフォークに興味を持つきっかけなのでした。
それはともかく、拓郎さんの近年のインタビューによると「コード進行が好きだったんです。あと、斉藤哲夫のオリジナルにはピアノが入っている。ピアノも曲の大きな要素だってことを教えてくれた曲」だったそうです(「AERA in Folk」より)。
この曲でピアノを弾いていて、ジャケットにも登場しているのは、後にはちみつぱい~ムーンライダーズの鈴木慶一さんなのでした。これが慶一さんの初レコーディングだったということも付け加えておきますね。
ちなみに吉田拓郎さんは1979年発売のライヴ・アルバム『TAKURO TOUR 1979』でも「されど私の人生は」を再び取り上げています。
デビュー曲の「悩み多き者よ」も哲夫さんのオリジナル・ヴァージョンより早く、カヴァー・ヴァージョンを聴いています。
それはオフ・コースのライヴ・アルバム『秋ゆく街で~オフ・コース・ライヴ・イン・コンサート』に収録されていたのでした。
このアルバム、洋楽や日本のフォーク、ロックのカヴァー曲が多く収録されていまして、オリジナルを調べるだけでかなり勉強になるのです。
このアルバムで取り上げた曲の多くは後に小田和正さんのTVプログラム「クリスマスの約束」や「風のようにうたが流れていた」などで再び取り上げていて、小田さんの揺るがなさみたいなものが伝わります。
さて、オフ・コースと哲夫さんのコラボといえば、1975年のシリーズ・イベント「小さな部屋」に出演して、「グッドタイムミュージック」をセッションしています(オフコースのアンソロジー本「はじめの一歩」によると、ギターとピアノが哲夫さんのサポートをしていて、写真を見た限りギターは渡辺勝さんだと思います、なのでピアノは写っていませんが岡田徹さんだと推測されます)。
そして、それから30年以上経って、小田和正さんの番組「クリスマスの約束」(2006年12月放送)で哲夫さんと小田さん(のバンドと)で「悩み多き者よ」と「グッドタイムミュージック」をセッションしています。
話は前後しますが、1972年にはファースト・アルバム『君は英雄なんかじゃない』をリリースしています。アルバムの一部は元ジャックスで、当時URCレコードのハウス・ディレクターだった早川義夫さんがプロデュースしていますね。
このアルバムではCBSソニー~キャニオン・レコード時代に多くの楽曲で編曲を担当した瀨尾一三さんが何曲かで編曲をしています。
ちなみにこのアルバム用に録音された「ねえ君」はムーンライダーズの岡田徹さんと白井良明さんによる演奏で、白井さんの初レコーディングはこの曲だったそうです(説明しますと、ファーストには未収録となり、CBSソニー移籍後のアルバム『バイバイグッバイサラバイ』に収録されました)。
白井さんが哲夫さんのサポートをするきっかけは、(本来キーボーディストの)岡田徹さんが哲夫さんのサポートをギターでやっていたので色々と難しくなり、岡田さんと同じサークルにいた白井さんに白羽の矢が立ったというようです。
その後、CBSソニーに移籍し、1973年に『バイバイグッバイサラバイ』、1974年に『グッドタイムミュージック』、1975年に『僕の古い友達』の3枚のアルバムとシングル5枚をリリースしています。この時期の作品はフォークというより、ビートルズに影響を受けたものが多いと思います。
タイトル曲の「バイバイグッバイサラバイ」は岡田さんによるピアノも相まって、ポール・マッカートニーを連想させる仕上がりになっています。
もう1つのタイトル曲「グッドタイムミュージック」のコーラスはシュガー・ベイブで、彼らの初の外注仕事だったとされています(ナイアガラ関連やCM以外で初めてオファーがあったと解釈してます)。今聴くとイントロ部分では村松邦男さんの声が前面に出ていますね。
この曲は変則的なメンバーが録音に参加していて、ピアノが松任谷正隆さん、ドラムスが林立夫さん、ベースが鈴木博文さん(これは当時、細野晴臣さんと哲夫さんの間で色々あったからだとか)。
編曲は瀬尾一三さんで哲夫さんのソニー時代の作品のほとんどが瀬尾さんによる編曲でした。
瀬尾さんがシュガー・ベイブを気に入って、山田パンダさん「風の街」などで起用した流れの1つだと思います。
この曲をその年に発表された日本の音楽でベストに入るという評価をした、オフ・コースが自らのイベントに出演依頼をしたのでした。
皆さまご存知の通り、この曲も小田さんの「クリスマスの約束」でセッションされています。
1979年にはキャニオン・レコードに移籍し、シングル「ダンサー」とアルバム『一人のピエロ』をリリースしています。
「ダンサー」はムーンライダーズのメンバーが全員参加していて、林美雄さんのTBSラジオの人気番組「パック・イン・ミュージック」の伝説的コーナー「ユアヒットしないヒットパレード」にランク・インするほどの人気曲でした。
1980年にはアルバム『いつもミュージック』とシングル「今のキミはピカピカに光って」をリリースしています。
「今のキミはピカピカに光って」は作詞糸井重里さん、作曲&編曲は鈴木慶一さんによるCMソングがあまりにも好評だったので、レコード化することになり、結果として大ヒットしたのでした。演奏はPANTA&HALのHALが担当しています。
この時期、あのCMに出演されていた宮崎美子さんと「明星」の表紙になる予定もあったくらい哲夫さんも注目されました(撮影前日に哲夫さんがアルコールを大量摂取した名残りがあって、撮影を中止したとか)。
1980年にはシングル「ひょんなことから有頂天」(作詞糸井重里さん、作曲は哲夫さん、編曲は瀨尾さんでした)もリリースされたり、宮崎美子さんをジャケットに使ったミニ・アルバム『ピカピカ』(カセットは10曲入りのベスト盤仕様)もリリースされたのですが、諸々の事情で活動を一休みすることになってしまいました。
しばらくの沈黙の後、1984年に『武蔵野フォークジャンボリー』に出演しています。レコード化された「ダンサー」は弾き語りで、当時の新曲「恋をしよう」は元はちみつぱいで、初期の段階から哲夫さんのサポートをしていた渡辺勝さん(哲夫さんの名曲「吉祥寺」のモデルとされる人でもあります)と二人で演奏しています。
1988年には汐留PITでのはちみつぱい解散ライヴ「15YEARS AFTER」にゲスト出演してます。
この出演は鈴木慶一さんの発言によると「はちみつぱい~ムーンライダーズは斉藤哲夫周辺のミュージシャンを引き抜くことで成立したバンド」だったからとのことでした。ちなみに同日出演した他のゲストは高田渡さん、あがた森魚さんに(オリジナル・ムーンライダーズのメンバーだった)山本浩美さんです。
この日は白井良明さんとの「ハレルヤ」、はちみつぱいとの「甘いワイン」、「悩み多き者よ」などが演奏され、ほぼ完全収録のライヴ・アルバムもリリースされました(現在は再び廃盤の模様)。
1992年、久々のアルバム『ダータ・ファブラ』(「甘いワイン」収録)をリリースした後、1994年にはシングル「ぼくはゴルフで悩んでる」(CMソングで白井良明さん編曲、タイトル曲は『ムーンライダーズのいい仕事フォーライフ編』に収録されています)、生田敬太郎さんと『生田敬太郎&斉藤哲夫』、2001年ミニ・アルバム『昨日・今日・明日』と『君が気がかり』をリリースしています。
ジャック達との交流はこの少し後から始まり、原宿クロコダイルでのライヴで対バンしたことを経て、2008年7月のイベント「一色進トリビュート」で「甘いワイン」「MOTORCYCLE JUSTICE」を演奏し、2013年9月にはジャック達主催イベント「ロマンティック研究所」に出演しています。この日は「あんたあの娘に」「Who'll Stop The Rain」「夜空のロックン・ローラー」「MOTORCYCLE JUSTICE」を哲夫さん+ジャック達で演奏しました。
開演前、一色さんのソロ・アルバム『歪』を指して「これは一色にしか出来ない世界だな」と話したことをはっきり憶えています。
2005年8月、YOSAKOI JAMBOREE (高知県・吉川村天然色劇場)に白井良明さんと出演。この日は他に小田和正さん、スターダスト・レビュー、Kiroro、大友康平さん、南こうせつさんに伊勢正三さんも出演しています。
この日が翌年の「クリスマスの約束」に哲夫さんが出演する最大のきっかけだったと思っています(ちなみに出演者による集合写真が2005年の小田和正さんのツアー・パンフレットに掲載されてます)。
2009年にはセルフカヴァー・ベスト・アルバム『SPINACH』をリリースしました。このアルバムのコーラスは全て哲夫さんが担当していて、オリジナルとはまた違った雰囲気の仕上がりです。「今のキミはピカピカに光って」は糸井重里さん作詞・鈴木慶一さん作曲ということもあって、ボーナス・トラックとして収録されました。
ここで取り上げた哲夫さんの曲はほぼ収録されています(「恋をしよう」や2000年前後にマキシ・シングルで発表された曲は収録されていません)。
その後は色々とありましたが、ライヴ活動を再開しつつあった時期にコロナ禍があって現在に至っております。
ここに書いた以外にも大学(明治学院)の後輩であるアルフィーのメンバーとの交流(坂崎幸之助さんとは番組で何度も共演し、桜井賢さんと高見沢俊彦さんは授業で哲夫さんのことを「君たちの先輩にこういう人がいる」と聞いたことがあるとか)やチューリップの上田雅利さんや安部俊幸さんは哲夫さんのファンだったそうです。
いつの日かまた哲夫さんとジャック達との共演が実現することを熱望してます。
・斉藤哲夫さんの現在新品で入手可能なアルバム
・君は英雄なんかじゃない+3(URC/グリーンウッド・レコーズ)
・バイバイグッバイサラバイ(ソニー・レコード)
・グッドタイムミュージック(ソニー・レコード)
・僕の古い友達(ソニー・レコード)
・プラチナムベスト斉藤哲夫ライフタイム・コレクション(ポニー・キャニオン)
・参考資料~はじめの一歩/オフコース・ファミリー(サンリオ)
ROCKS OFF vol.7(白井良明さんとの対談、インタビュアーは小暮秀夫さん、シンコー・ミュージック・エンタテイメント)
URCレコード読本(シンコー・ミュージック・エンタテイメント)
スローハンドvol.3(自由国民社)
坂崎幸之助とJ-POP Friends vol.1&3(自由国民社)
AERA in Folk、ストレンジデイズ、ミュージックステディなどなど雑誌多数。
レコード発売日などはWikipediaを、ライヴ曲目の一部はGO→ST HPを参考にしました。
・追記~哲夫さんがヴォーカルで参加した西岡たかしさん、木田高介さんとの『溶けだしたガラス箱』はアシッド・フォークの名盤ですので、いつか本格的に書くことができたらと考えております。
あと、ジャック達に鈴木さえ子さんが加入したので、哲夫さんの名曲「バイバイグッバイサラバイ」や「グッドタイムミュージック」(コーラスに村松邦男さんが加わればレコードに近い形で再現できるとか妄想してます)、「悩み多き者よ」をライヴで聴くことができるかもしれませんね。その日が実現することを願いつつ今回はこの辺で。
All written by Hiroshi Sugar Sugai
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